SF数あれど、この作品の面白さは図抜けている。

私にとってのシルヴァーバーグは、グロテスクで異形な美しさに満ちた世界を描く天才である。
グロテスクなもののなかにも美がある、たとえばイソギンチャクとかクラゲとか、昔は「気持ち悪っ」「きしょっ」と言われいたような生物が、今やDVDになったりして、美として鑑賞されている。
蜘蛛やサソリや爬虫類なんて、最近は大人気だ。
プラナリアだってミミズだってナメクジだってカイチュウだってコウガイビルだって、よく見たら美にあふれている。
ただしそれは、じーっと見つめていると背筋が寒くなってくるような美だ。
廃墟とか廃屋なども、新しい異形の美がそのなかに発見されたのだ。

シルヴァーバーグの世界には、そういうものがぎっしり詰まっている。
外観だけではない。
人格的に破綻した登場人物の、そのいびつで嫌な感じのキャラ造形自体が美しいのだ。

アイデアの詰め込みかたはワイドスクリーン・バロック的でもあるが、ひとつひとつのネタが有機的に結合しているという点ではちょっと違うかも。

本作は、なぜか家に五冊ぐらいあって、なんだか古本屋で見かけるたびについ買ってしまうのだ。
SFシリーズとか原書とかも持ってるけど、でも、やっぱりハヤカワ文庫のあの表紙がいちばんしっくり来る。
「大地への下降」も傑作だと思います。