著者近影

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Profile

神野オキナ(かみのおきな)

95年 複数のペンネームで作家活動開始。
99年 ファミ通えんため大賞募集時に現在のペンネームに改名統一。
代表作「あそびにいくヨ!」「疾走れ、撃て!」「うらにわのかみさま」他

代表作と、その作品についての思い

『あそびにいくヨ!』第一巻

南国戦隊シュレイオー」という作品を3冊書いた後、それまでの「思いついたものはありったけ突っ込む」創作方式だったのを変えよう、と思い立ち、まずはコメディをもう少し突き詰めたいな、と思っていたら不意に「最もSFマニアな人たちにとって、ファーストコンタクトにやって来たら怒る異星人は誰だろう?」というネタが降ってきて、「それはどう見ても猫耳尻尾を付けただけの人類そっくりで言葉も通じる『宇宙人』だろう」と。

そうなると、前作で初のコメディだった「シュレイオー」で好評だったのんびり屋で優しい虎紅というキャラを発展させて「サクラ大戦3」の主役、エリカのキャットスーツ姿と融合させ、その足下に二頭身の「ホイホイさん」がお世話のために並んでいるという図が浮かびました。

そして主人公は完全な巻き込まれ型で、少なくとも当初は「善人だけど普通の少年」でいこう、と決めました。

「あそびにいくヨ!」というタイトルはその時また同時に浮かんだものです。

てっきり企画会議でボツにされるか、と思っていたらあっさり通り、執筆に。
当初の予定ではエリスはむしろ、後に出てくる「いちか」に近く、騎央も自分の将来を見つめて働く準備を始めているという設定でしたが、どうにもしっくり来なくて、結局ああいうキャラになりました。

さて出版されたら放電映像さんの挿絵のお陰もあって、あっという間に20冊…………と言いたいところですが、苦労したのは二巻目でした。

さてどうしたものか、と思っていたら、長期シリーズの方向転換で「007・ゴールドフィンガー」という映画を思い出しまして。
それまで「ドクター・ノォ」に「ロシアより愛をこめて」の渋い現実の延長線のスパイものだった007が一気に大富豪の敵役、ゴールドフィンガーの登場で豪華絢爛な大活劇になったように、この作品も幅を広げよう、と思っていた所に「21世紀は宗教の時代」という星新一先生の言葉が浮かんで生まれたのが「猫耳教団」と大富豪アントニアでした。

おかげでお話は沖縄だけではなく、世界、宇宙を駆け巡る規模のスケールになりましたが、そこからがまた別の苦労の始まりで(笑)

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神野オキナの本棚

最近亡くなられた平井和正先生の、個人的には最高傑作だと思っています。

孤高の少年が、暴力渦巻く中学に転入して来て、残虐な暴力の嵐に巻き込まれ、自分ではなく、他人の為に立ち上がる物語。
それまで個別の物だったエロスもバイオレンスもハードボイルドも伝奇も、全てぶち込まれて完成した、日本の小説の歴史に現れた神話のような作品(だと個人的に思っています)。

主人公の犬神明は、少年主人公を作る上で、今でも一つの基準点ですね。

狼の紋章
平井和正

どのジャンルにおいても決して手を抜かず、人と人とが織りなす光の部分も、暗い部分も含めた物語を描き続けて来た環さんの最初のヒット作。

とにかく、キャラクターを追い詰め、逆境に放り込み、悲惨な目に合わせ、そこから這い上がらせていくことの上手いこと酷いこと凄いこと。
プロット力、というものを学ぶには最適の教科書、何しろ面白くて長い。

現在第二部の「スカーレット・オーダー」は4巻で今のところ中断しておりますが、作者ご自身が「まだ足りない」という、14巻に外伝10冊近くを描いてもなお、その物語力の強さと絵の艶が変わらないのがまた。

先に挙げた「狼の紋章」の読者世代が生み出した最大の果実。

ダンス イン ザ ヴァンパイアバンド
環望

現代におけるピカレスクロマン、という言葉の意味を恐らく日本で最も理解している漫画家は広江さんだと思います。

単なる作者の代弁者や語りたい物語の都合ではなく、キャラクター同士が実際の血肉を持ち、人生を持っていると錯覚するほどに緻密に描かれ、ディフォルメされつつも最後のリアルの一線を持ってぶつかり合う物語の流れは、ある意味環望さんと同じ「読者の鼻先を引っ掴んでヒイヒイ言わせつつ引っ張り回す」パワフルさ。

巻末ごとに入っているギャグ劇場のキレ具合も本編との落差の凄さがあってまた楽しいです。

BLACK LAGOON
広江礼威

日本国内で読める最も長い、そして最もおっかない「物語の塊」。

医者であり、戦争をリアルに体験した人のぞっとするような空虚さと、それでも残る優しさの集大成といっていい巨大な本。
実際分厚くて全三巻(文字の大きい版だと四巻)の大著。
あらゆる人間を死んだ年齢でまとめ、並べているだけ、ながらその無味乾燥さとチョイスの仕方、そして描く視点の冷徹さが凄い。

最初のうちは「早死にする人は可哀想に」ぐらいなのだが、後半に行くに従い、その早死にした人を看取った人々の死が描かれていくあたりになるともう、巨大な「死」という穴に向かって行進していく人々の群れが見えてきて、読み終わるころにはその中に自分もいて、しかもそれこそが現実というものを突きつけられる。

2年に1回はかならず読み返しております。

年齢を重ねて読み返せば読み返すほど意味がまた加わっていく形式の本。

人間臨終図巻
山田風太郎

榊一郎という作家さんは常に新作が面白い希有な作家のひとりで、その中でもアニメ化された「棺姫のチャイカ」とこのシリーズは革新的。

異世界に放り込まれて現代社会の文明や機器を使って、みたいな話は結構ありますが「オタク文化」による「文化侵略」がテーマという着眼点がさすが。
そこから拡がっていくであろう「面白そうなこと」を何一つ漏らさず書き取っていくその腕力。

アウトブレイク・カンパニー 萌える侵略者
榊一郎

浅井ラボさんはもの凄い好青年ですが、おっかない人です。
…………といってもすぐに暴力を振るうとか、口が悪いとか、人のネガティブ発言を見つけてはウェブであげつらうとか、という意味では無く。

作品の中における視点の置き方、世界の切り口の見つけ方と、それを緻密に組み合わせてスピード感のあるエンタメに昇華しつつ、毒は残す、というところが又怖い。
まだレーベルのイメージが固まる前とはいえ、これを出版したHJ文庫さんは凄いです。

TOY JOY POP
浅井ラボ

異世界に、ブラック企業に勤めていた一介のサラリーマンが四畳半サイズで持ち込める文明の利器と、その維持方法はどうするべきか、という導入からいつの間にか国内問題はおろか国家間の争いにまで巻き込まれ、四苦八苦しながらもその国の偉大なる女王=可愛いお嫁さんとの純愛を貫き通す、面白くて楽しい物語、という作りがどこも矛盾無くかみ合うところが天与の才だよなあ、と思います。

故ヤマグチノボル先生の「ゼロの使い魔」と同じように作者も苦しみつつ、楽しんで読者と踊っている感じがするのが羨ましい。

昔ならこういう場合、文明の利器と一緒に百科事典を持ち込むのがウェルズの「タイム・マシン」以来のお約束ですが、主人公がウェブの質問箱のプリントアウトをしてもそれを考えもしない、というのをさらりと流してしまうところが、ちゃんと今の感覚をもった人だなあと感心しました。

理想のヒモ生活
渡辺恒彦