著者近影

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Profile

一田和樹(いちだ かずき)(いちだ かづきのペンネームを使うこともあります)。

11月6日 東京生まれ。バンクーバー在住。
経営コンサルタント会社社長、IT企業の常務取締役などを歴任後、2006年に退任。
2009年1月より小説の執筆を始める。
文學界新人賞、小松左京賞など6つの賞の最終候補に残る。

2010年、長編サイバーセキュリティミステリ 『檻の中の少女』で島田荘司選 第3回 ばらのまち福山 ミステリー文学新人賞を受賞し、デビュー。
サイバーミステリを中心に執筆。作中に描かれていることは、リアルに実行可能である。
その他にダークファンタジー(『告白死』、『時の眷属』)やショートショートも手がけ、2,000本を超えるツイッター小説の書き手としても知られる。

『告白死』は、中村明日美子先生や古屋兎丸先生ファンのサブカル腐女子に人気のネット小説で、インモラルな性と死がテーマな耽美小説といえばカッコいいが、エログロなキチガイ小説。
ネットでは二次創作やコスプレ勢も生まれている。

『時の眷属』は、「異形の種族獣肢の輩(ともがら)、神に愛されすぎて死を喪った非業の王。息子と交わりその子を産み、さらにその子ともまぐわった王妃……」という紹介文の冒頭でご飯三杯食べられる人向け。
商業出版のメインはサイバーミステリで、敗れ去る探偵を描くノワールなハードボイルドが多い。
サイバーセキュリティ、サイバー軍需企業に関するコラムや書籍も執筆している。
頼まれると同人誌にもほいほい書くので、ネットのあちこちに作品が落ちている。

2011年4月、『檻の中の少女』(原書房)刊行
2011年6月、『ジャーロ』(2011、SUMMER、光文社) 変則ミステリ短編『預り地蔵』
2012年2月、『サイバーテロ 漂流少女』(原書房)刊行
2012年4月、『キリストゲーム CIT内閣官房サイバーインテリジェンスチーム』(講談社ノベルス)刊行
2012年6月、『式霊の杜』(講談社ホワイトハート文庫)刊行。(いちだ かづき名義)
2013年2月、『サイバークライム 悪意のファネル』(原書房)刊行
2013年3月、『式霊の杜 愚者の約束』(講談社ホワイトハート文庫)刊行。(いちだ かづき名義)
2013年7月、『サイバーセキュリティ読本』(原書房)刊行。
2013年10月、『もしも遠隔操作で家族が犯罪者に仕立てられたら ネットが生み出すあたらしい冤罪の物語』(技術評論社)刊行。
2014年1月、『ノモフォビア』(キリック)刊行。
2014年2月、『電網恢々疎にして漏らさず網界辞典準備室!1』(技術評論社)刊行。
2014年3月、『個人情報ロンダリングツール=パスワードリスト攻撃シミュレータの罠』(技術評論社)刊行。
2014年3月、『アンダーグラウンドセキュリティ 1』(角川書店)刊行。
2014年11月、『絶望トレジャー』(原書房)刊行。
2015年 1月、『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)刊行。
2015年 3月、『ファミリー・セキュリティ読本』(原書房)刊行。
2015年 3月、『オーブンレンジは振り向かない』マンガ、原作担当(原書房)刊行。
2015年 3月、『サイバーミステリ宣言!』共著(角川書店)刊行。

2015年6月に、『サイバー空間はミステリを殺す』(ジャーロ 54号 夏号掲載)、『サイバーミステリ宣言!』(角川書店)と続けて界隈を煽ったものの、ガン無視を決められて死にかけているとの噂。
マンガの原作楽しかったので書かせてください。お願いします。

将来の夢は、捨てた女に殺されること。

代表作と、その作品についての思い

『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社文庫)
シリーズ化の予定です。

小説で一番新しい『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』を選びました。
シリーズ化が予定されています。

この作品は、私の最初の恋愛小説です。
表向きは、サイバーミステリの体裁をとっていますが、「生き方を選べない」不器用なふたりが出会って旅に出るまでの物語でもあります。

担当編集さんによると、編集部の男性陣から全く進展しないぎこちない恋愛がすごくいいと評判だったそうです。
ラブシーンと言えるのは手を握るシーンだけですし、主人公の安部響子は相手に告白された時に速攻で断っていますし、ロマンスパラダイスが全くないのですが、それでもどきどきする雰囲気を感じてもらえてうれしかったです。

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一田和樹の本棚

最初にご紹介したいのは、この本です。
「なんだ。マンガかよ」と言わないでください。読めばわかる凄みがあります。
物語は淡々としており、画風も派手ではないのですが、じわじわと蝕まれていって気がつくととりこになっています。

70s、80sの少女マンガ黄金のカンブリア紀に出版された作品は、ほとんど読破しています。
萩尾望都先生、大島弓子先生、大矢ちき先生、吉田秋生先生、山岸凉子先生などなど銀河流星群がきらめくあの年代で、杉本啓子先生を選んだ意味は読まなければわかってもらえないでしょう。

70s、80sの少女マンガ黄金のカンブリア紀に言及する人は多いのに、ほとんどの人が杉本啓子先生について語っていません。
そういう人は、あの時代にあまり少女マンガを読んでおらず、後の時代になっても購入可能なものと、検索して話題になっているものをピックアップしているだけじゃないかと思うくらいです。
暴言だとわかっていますが(自分のことかと思った人には謝ります、すいません。でもきっとあなたのことです)、それほどに私は杉本啓子先生のこととなると熱くなります。とにかく読んでください。

とぎすまされた絵もセリフは、いまでも私の身体の中に残っています。
カナダへ移住の際、ほとんどの本は手放して、5冊のみ持って渡加しました。その中で一番大切な本がこれです。
三岸せいこ先生の本(単行本もりぼデもぶーけも)も内田善美先生の本も、『いまあじゅ』の載った「りぼん」も『アミ……男友達』の載ったりぼんも手放したんですよ! わかります?

この才能と表現力が埋もれてしまったのは本当に残念です。
よい作品だからといって残らないし、よい作品を描く人だからといって生き延びられるわけではないということを身をもって教えてくれました。

空中庭園
杉本啓子

私は短い小説を読むのも書くのも大好きです。
ショートショートの中で一番好きなのが、『七日間の恐怖』で二番目に好きなのが『スロー・チューズデー・ナイト』。
どちらも『九百人のお祖母さん』に収録されている作品です。

人を食った意表を突く展開とキレのよいオチ。
『七日間の恐怖』の最後のオチは目から鱗で、あれを超えるオチを書けたら死んでもよいと思うくらいです。

それなのに、国内ではあまり知られていないことが悲しいです(一部の層を除いて)、先日ショートショートに一家言お持ちの先生(ご自身でもショートショート集を出版なさっている)が、R・A・ラファティ先生をご存じなかったことは衝撃でした。
私にとって、『七日間の恐怖』を読んでいないということは、ミステリでシャーロック・ホームズやエラリー・クイーンを読んでいないことに等しいように思えたのです。

人を食ったきれいなオチが大好きな私としては、雰囲気で読ませたり、考えさせたりするショートショートばかりが出版される昨今の風潮にはなじめないこともあって、著名ショートショート作家の先生方をさしおいてR・A・ラファティ先生を紹介いたしました。

R・A・ラファティ先生は、よい作品だからといって、その界隈のキーパーソンに読まれるわけではないことを教えてくれました。
世の中は皮肉と欺瞞に満ちています。

九百人のお祖母さん
R・A・ラファティ

小説界のダヴィンチ、フレドリック・ブラウン先生はなんでも器用にこなしてらっしゃいますが、人を食ったきれいなオチのショートショートもたくさん書いてらっしゃいます。

あまりに有名すぎるので短めで失礼します。

未来世界から来た男
フレドリック・ブラウン

日本でショートショートといえば星新一先生です。
私は先生が小説現代誌上で開催していたコンテストの投稿者であり、掲載者でした。
今でも私の投稿した作品を収録した文庫が書店に並んでいます。

当時、入賞者を集めたパーティが年末にあって、お誘いいただいたのですが、仕事で行けませんでした。
泣く泣くお断りの返事を差し上げたところ、編集部から「星先生がお会いしたいとおっしゃっています」とわざわざ電話までいただきました。
あの時、行けなかったことは死ぬまで後悔するでしょう、というか死んでいいくらいもったいなかった。
その後、掲載された作品は下條アトム先生のラジオで朗読されました。

星新一先生は、島田荘司先生と並んで私の心の支えであり目標です。
あまりに有名すぎるので短めで失礼します。

ようこそ地球さん
星新一

実は「メタマス!」は原書で読んだので日本で出版されたものは未読です。すみません。
読んでないのに紹介するってどうなんでしょうね? ダメっぽいですか、じゃあこの節は飛ばしてください。

ゲーデル先生の「不完全性定理」、チューリング先生の「停止性問題」、チャイティン先生の「Ω」は物事の本質を考える時に知っておかねばならないことのひとつだと考えています。
物事の本質に思いを馳せる人の中に、「不完全性定理」や「停止性問題」を知らない人はいないと思うので、チャイティン先生を紹介することにしました。

この本は一般向けに書かれてはいますが、数学の素養がないと理解できません。
もちろん私も理解していません。雰囲気で察しています。

メタマス!―オメガをめぐる数学の冒険
グレゴリー・チャイティン

インターネットなどない時代から、この作品は存在し、いまでもおもしろく、切ないです。
そのことも含めてすごい。
おもしろいものは陳腐化しないのだと教えてくれました。

私の書くサイバーミステリが時代を経ておもしろくなくなったとしたら、それはジャンルのせいではなく力不足のためです。
もとからつまらないという突っ込みはおいときます。

電話男
小林恭二

作ったのは東京都世田谷区の精神障害者就労継続支援B型事業所「ハーモニー」の人たち。
かるたと、解説冊子およびDVDのセットです。
統合失調症についての解説も載っており、大変おもしろくためになります。

この本の存在を知ったのは、「パリパラ」というNHK番組でした。
障害者によるバラエティショーをやっておりまして、脳性マヒ患者が話した内容を看護士のみなさんが当てるゲームとか、漫才やコントなど、ここまでやるのかNHKという内容で、このためだけに視聴料を払ってもよいと思えるくらいでした。
笑えてためになって、しかも考えさせられます。

最近では、SHOW-1グランプリという日本で一番おもしろい障害者パフォーマーを選ぶ大会まで開催しているとか! アルコール依存症の絶叫詩人、寝たきりのコント職人、高次脳機能障害のビジュアル系アーティスト……卑怯なくらいおもしろそう。
カナダにいて視聴できないのが悲しいと思ったテレビ番組はこれだけです。

閑話休題

この番組で、『幻想妄想かるた』を知ってすぐに予約しました。
同業の物書きの方から、「一田さんは頭のおかしい人を書くのがほんとうにうまい」と評される私が、このかるたを見逃すわけにはいきません。
新しい発見がぎっしりつまっていて驚かされました。

みなさんも買って、この手の本がたくさん出版される環境作りをしましょう。
なお、DVDに収録してある市原悦子さんの読み上げは、なんとなく怖くて聴いていません。

幻聴妄想かるた
ハーモニー

他にもたくさん紹介したい本はあるのですが、またの機会にあらためてということでいくつかタイトルのみあげておきます。
他の作家の方が紹介しそうな本はできるだけはずしました。
似たようなこと何度も読みたくないでしょ。

『ヴィクトローラきこゆ』三岸せいこ(集英社)
『アミ……男友達』一条ゆかり(どの単行本に収録されているか見つかりませんでした。すいません)
『いまあじゅ』大矢ちき 『キャンディとチョコボンボン』(小学館文庫)収録
『人間仮免中:』卯月妙子(イースト・プレス)
『Dブリッジテープ』沙藤一樹(角川書店)
『アメリカンパイ』萩尾望都(秋田文庫)
『熱帯のシトロン』松本次郎(太田出版)

なお、渡加の際に持ってきた5冊の本で、今回取り上げたのは杉本啓子先生の1冊のみです。
宝物なんですから簡単には開帳しません。

さらに……